わたしのおすすめの一冊

「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」

著者:デイヴィッド・ミーアマン・スコット / ブライアン・ハリガン
翻訳:渡辺 由佳里
監修:糸井 重里  
出版社:日経BP社
出版日:2011年12月

 

コンテンツ展開を別の面から考えるヒントに

知的財産管理技能士が音楽ビジネスに関わるとしたら、まずは楽曲に関わるさまざまな著作権を調べて、権利関係をしっかりとコントロールしてマネタイズにつなげる、と考えるのが当然のことでしょう。ところが、そうしたルーティンをスルーしつつも、いつの間にか巨大なコンテンツに成長していったのが、1965年に登場したアメリカのロックバンド「グレイトフル・デッド」です。当時のヒッピー・サイケデリック文化を象徴する存在として、若者の圧倒的な支持を得た彼らは、アメリカではビートルズよりもローリングストーンズよりも売れたバンドといわれています。

なぜ彼らが成功したのか?本書では、彼らのユニークなコンテンツ展開と、それを応用したと思われる企業のビジネス展開の事例を結びつけて紹介しています。

音楽ビジネスでは、ライブ演奏はレコードを売るためのものというのが一般的な見方ですが、彼らはとにかく演奏が好きなので、恒常的に全米を回っていました。ロックに限らず通常はライブの録音は禁止ですが、彼らは基本OKで、ファンのために会場では(当時はテープレコーダー)録音用ケーブルまでも提供しました。このテープをファン同士が流通することで、さらに多くの人が彼ら音楽を楽しむことにつながりました。それは、PCの無料アプリのビジネスモデルになったともいわれています。また、ブランド管理も無頓着で、ライブ会場で、無断で模造品を売っている行商人がいても、その製品がよければ提携してライセンスを与えることもあったそうです。インターネットの黎明期には、いち早くニュース・グループを立ち上げて情報発信をはじめています。

現在のアメリカ経済を支える人たちの中は、彼らが作った音楽文化の洗礼を受けた人が数多くおり、当時の体験をビジネスに反映させているケースもあります。そうした事例として、彼らの戦術を応用したと思われる企業のマーケティング事例にもふれています。

知的財産をどうビジネスに結びつけていくかは、知的財産に携わる者には重要なミッションですが、すべてがマニュアル通りに運ぶわけではありません。彼らが作り上げたビジネスモデルはすべてが正解ではないのだろうけれど、コンテンツ展開を考えるときのもう一つのヒントとして役立つのでは、と思い、ここに紹介します。

評者:会津 宏 
知的財産アナリスト(コンテンツ)

出版社ウェブサイトlink.gif amazonウェブサイトlink.gif

このエントリーをはてなブックマークに追加

 

 



copyright.gif 2008 Association of Intellectual Property Education