わたしのおすすめの一冊

bookreviewlogo.png

「情報・コンテンツの公正利用の実務 」

編著者:齋藤浩貴/上村哲史(森・濱田松本法律事務所 パートナー)
出版社:青林書院
出版日:2016年9月

 

情報・コンテンツの公正利用の実務

この本に書いてあることは、知的財産管理技能士の皆さんなら、すでにご存じのことばかりかもしれません。でも、そんな皆さんにとって、この本が実力を発揮するのは、「上司や同僚の疑問に答える」時ではないか、と思うのです。

会社で、知的財産の素養のない同僚・上司に向かって、その行為は〇〇なのでそのままでは問題が起こります、と説明するとき、「難しいからもういいよ」と言われた経験はないでしょうか。あるいは、似たような(と相手は思っている)事案を出してきて、「このサイトで弁護士がこう言っているから大丈夫」などと言われたことはないでしょうか。
その事案とこの事案はこんな風に違うので参考にならないんですよ、といっても相手はなかなか聞き入れてくれません。本人が「似ている」と思っていることが法的にどう違うのか説明しても、「めんどくさい話はおいておいて」、となってしまったり、「弁護士が(あるいは弁理士が)こう言っているから正しいんだ」と結論付けようとしたり。
「Aの場合はよくてBの場合はダメなのはなぜか?そんなのおかしいじゃない。法律ってそんなに変わるの?」…はい、変わるんですよ。状況が違うので。 そんな相手にわかるように、もっとすっきり話したいなぁ…という時にこの本が役立つと思ったのです。

全体の構成は基礎編と実務編の2部構成で、特に実務編の構成が秀逸です。
基礎編の解説は、知的財産の基本を押さえながら過剰にならず(ここ大事)、「難しい話はもういいよ」と言われる前に説明し終わる分量です。
また、実務編の事例は、キュレーションビジネス、評判分析、類似画像検索、検索連動広告etc、ビジネストレンドに敏感で知的財産に無頓着なマネージャー層から指示がありそうな案件が上がっています。その一つ一つの設定の細かさは、上司に説明する場合に「当社の場合ですとこの部分が△△で…」と話しやすいと思いますし、何より相手が興味を持ちやすい問いかけと答えになっています。

「自分自身のスキルを高めたい」とか「1級を目指したい」という方には正直物足りない解説かもしれません。でも、会社の机に常備して、辞書的に「〇〇はこうですよ」と差し出す、そんな使い方はいいなぁ、と思います。

評者:高橋 さぎり
平成28年度 知的財産管理技能士会 編集委員

出版社ウェブサイトlink.gif amazonウェブサイトlink.gif

このエントリーをはてなブックマークに追加

 

copyright.gif 2008 Association of Intellectual Property Education