著者:池村 聡
出版社:日本経済新聞出版社
出版日:2018年1月
本書は、著作物は情報であることを前提として、定義を語ることから始まります。知財を勉強された方であれば、著作物の4要件「思想又は感情を」「創作的に」「表現したものであって」「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」は、空で言えて当たり前。しかし、法律要件が頭に入っていても、いざ問題にあたっときの判断は、なかなか難しいものです。
本書の中で紹介されている「古文単語語呂合わせ事件(東京地判平成11・1・29)」において、古文単語語呂合わせの著作物性について判断がなされました。次の[1]~[4]のうち、裁判所はどれを著作物だと判断したのかお分かりになりますか。
[1]「朝めざましに驚くばかり」
[2]「志賀直哉もガーナチョコレートを食べたい」
[3]「ゆううつな井伏氏」
[4]「不吉なコーヒーUCC。立派なコーヒーUCC」※。
「著作物」かどうかという判断は非常に微妙であり、難しい場合が多く、裁判においてもケースバイケースで判断せざるをえない状況のようです。
現代において、私たちは高度情報通信社会を生き、経済・文化・生活において利便・効率・活力を実感し、その恩恵を受け、その反面、情報が身近にあふれていることで、誰もが著作権を侵害してしまうリスクと隣合わせにあります。不必要に恐れを抱く必要もないけれども、正確な知識をもち、冷静な目で判断することが重要だと、著者は述べています。
「改変を認識できれば『改変』に当たらない説」という「同一性保持権」に関する近時の学説、「リサーチツール規制」についての議論、「私的録音録画補償金制度」「フェアユース」「パロディ問題」等やこれまでの裁判例が、弁護士である著者の見解をまじえ、わかりやすく解説されています。
「コンビニにCDをダビングする機器が設置されている場合に、それを使用してCDをコピーする行為」と「コンビニ等で設置されたコピー機を使用して図画や文章を複製する行為」では、私的複製の判断が違ってきます。「権利制限規定」は複雑で、知識があっても、その判断に迷いが生じることが多々あると思われます。アウトかセーフかの判断材料となる事例が多く掲載され、中級以上の方の「正確さ」のブラッシュアップにも役立つ一冊といえるでしょう。
※[1][2]は著作物性を肯定、[3][4]は著作物とは認められませんでした。