研究会 活動報告
研究会は、知的財産管理技能士としての専門的知見を活かして研究を行う、知的財産管理技能士会の研究機関です。
研究会について
【『研究報告書』について】
研究会では、その活動成果を『研究報告書』という形にまとめています。
『研究報告書』は、知財技能士会会員専用マイページで閲覧することができます。
*平成23~27年度『研究報告書』は、『IPマネジメントレビュー』誌上でも発表しています
*一部研究成果は、日本知財学会学術研究発表会や他の専門誌でも発表しています
◆『研究報告書』全文は、知財技能士会会員専用ページに掲載しています。
フレイル関連技術と知的財産(権)~高齢化社会における知財活用の可能性~
知的財産管理技能士会研究会 研究員:仁平洋一、門脇徹治、川瀬健人
日本における高齢者の全人口に占める割合は、他の国々に比べても年々増えており、それに応じて医療費の問題や介護の問題が発生している。高齢化社会にあっては健常者から要介護へ移行する中間段階、つまりフレイルの段階において、さまざま予防措置を講じることで元の健常者に戻ることが可能とされる。そこで、当該分野への注力を検討すべく、2010 年以降の出願を対象にフレイルを対象とした特許を分析した。フレイルの早期発見・早期介入のために家庭や施設で簡便に診断・判定できる技術や、身体状態の管理を行うことでフレイル状態を予防する技術が期待されており、各企業や病院等により活発な研究開発が行われていることから、予防技術への注力が予想されたが、必ずしも出願は多く確認されなかった。他方で、センサーの活用や生成AI に代表されるICTの活用は、問診の自動化や、運動情報の分析等において活発に進んでいることが確認された。出願人には大学・研究機関、大企業からスタートアップ企業まで属性が異なる企業が多く含まれていており、関係機関の事業提携等を通じ、今後の発展が期待される。
なお、特許情報の検討と並行し、フレイル関連技術の情報収集を幅広く行ったところ、中小企業の取り組みも多く確認されるとともに、活発な事業提携等も確認された。今後の市場成長が期待される。
IT開発における知財認識の欠落と対処事例
知的財産管理技能士会研究会 研究員:坪井央樹
IT開発のフレームワークに知的財産権の取得と活用の工程を導入できないかを検討する。ITストラテジストとして活動・研究していると、IT開発のフェーズ(例えば、共通フレーム等である。)に知的財産権のことがあまり登場しない。これでは、開発プロジェクト等でITシステム、及び、新たな要素技術が開発されても、知的財産でつまずく可能性がある。一方で、例えば、中国は知財金融のしくみを利用して創業段階から知的財産権の取得、知的財産権による資金調達が活発であった。このような知的財産権の取得・活用が現状よりも上手く回るビジネス上のしくみを研究する。
魚類の知的財産としての保護とビジネスエコシステムに関する考察
知的財産管理技能士会研究会 研究員:櫻谷満一・川瀬健人
世界的に養殖業が拡大しているなかで、開発した魚類品種の権利を適切に保護し、育種に要する多大な労力、費用、時間に見合った利益を守ることが、我が国養殖業の発展には不可欠と考える。このため、本研究では、魚類品種の知的財産権の保護、知的財産権に基づくビジネスエコシステムについて検討した。その結果、特許については、餌や飼育方法により肉質・肉色、性成熟の速度等に特徴のある魚類を作出する方法や、遺伝子情報を活用した選抜方法により権利保護を図っていることが確認された。また、魚群の行動解析システム等の養殖に係る周辺特許で特許網を構築することで侵害防止を図っていることが示唆された。知財の保護や管理の面からは、大学、国研等公的研究機関で開発された品種や飼育方法を産地事業者、生産者にライセンスする場合、複数の主体が事業に関わることになることから、関係者の知財に対する意識改革に加えて、知財管理(主体間の調整、契約等)にコストがかかること、ノウハウの保護や生体の流出防止に注意が必要であること、事業化を検討する初期段階から企業との連携が求められること等を指摘した。
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植物新品種育成における実需者との連携
知的財産管理技能士会研究会 研究員:櫻谷満一・田中良恵
植物品種の育成には、長期の年月、多大な労力、資金等を要することから、民間企業の参入や産官学の連携によって種苗産業を活性化し、短期間で効率的にニーズに合った品種を育成し、国内のみならず海外への輸出拡大を目指すことが重要である。そのためには、育種素材を豊富に有する公設試験研究機関、大学、民間種苗会社と、実需者である食品メーカー、流通小売等との連携が欠かせない。
本研究では、植物品種の育成における実需者との連携に着目し、現状や課題を明らかにすることを目的に、今年度については、育成者権が共有になっている品種を品目ごと抽出しその傾向を分析した。
その結果、育成者権が共有の登録品種数は2005年から増加傾向にあるものの、近年は4品種前後で推移していることが明らかになった。また、育成者権が共有の品目別の品種数は、イネが30品種と最も多く、次いで、カンショ、イチゴが8品種、ナスが5品種の順であった。育成者権が共有の品種のうち実需者との共有となっているものは、イネが14品種と最も多く、次いで、カンショ8品種、イチゴ6品種の順であった。
今後は、種苗の増殖や流通も踏まえた品目ごとの特徴、育成された品種の活用状況等を調査し、実需者との連携方策や課題を明らかにする必要がある。
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パラリンピックのテクノロジーと知的財産(権)
~障害者スポーツビジネスと知財活用による事業加速の可能性~
~車椅子を一例として~
知的財産管理技能士会研究会 研究員:仁平洋一
FIFAワールドカップカタール2022での日本サッカーチームの熱戦に、普段サッカーに興味を持たない人々も盛り上がり、純粋に感動を覚える。スポーツはそのような不思議な力を持っている。同じように、4 年に一度開催されるオリンピック・パラリンピックも然りである。
各国のスポーツ選手、それを支えるスポンサー、さらにスポーツ関連企業がそのイベントをターゲットにしのぎを削っており、スポーツ関連企業は最高のパフォーマンスをスポーツ選手に与えるよう活動している。
ではこのようなスポーツに関する技術はどのような進化をみせているのだろうか。
今回、障害者スポーツの中でも日常生活に応用可能と考える車椅子関連スポーツの技術に特化し、知的財産権をベースに調査してまとめた。
車椅子関連スポーツに利用された技術は福祉医療や健康増進に大いに利活用できているのではないか。そのことを検証していくとともに、その検証の中での考察を試みた。
食品製造業における共同研究開発の動向に関する調査分析
-オープン・イノベーション活動の視点から-
知的財産管理技能士会研究会 研究員:櫻谷満一・川下英盛
我が国の食品製造業は、国内外の企業との競争激化、商品ライフサイクルの短命化等の課題を抱えているが、一方で、世界的には食市場の拡大、フードテック領域への投資拡大等ビジネスチャンスも広がっている。このため、食品製造業においても新たな領域の創出や新商品開発におけるオープン・イノベーション活動の重要性が指摘されているが、これまで当該業界の研究開発活動については、特定企業・商品の事例研究を中心に僅かに報告されているのみで研究蓄積が乏しい現状にある。
そこで、本研究では、食品製造業のオープン・イノベーション活動の状況や効果について考察するための予備調査として、研究開発費の多い大手食品製造企業6社(グループ)を対象に、特許の共同出願の状況、共同出願人の属性等について調査した。
その結果、今回対象とした企業(グループ)では、①特許出願に占める共同出願の件数、割合、共同出願の相手先について過去10年間で大きな変動はないこと、②共同出願の技術分野については、各社(グループ)とも食品が約10%、非食品が約90%の割合で推移しており過去10年間で大きな変動はないこと、③大学、公的研究機関との共願は医薬品関係、他企業との共願は容器関係が多いこと、が明らかになった。一方で、個別にみると、非食品分野での共同研究の成果がヒット商品の開発に結びついている事例や大学と共同研究の成果がヒット商品に課長されている事例などが確認された。
共同出願、共同出願の相手先、共同出願の技術分野と企業業績の関係については、今回の調査からだけでは明らかにできなかったが、今後は、中小規模の企業にも調査範囲を拡大してサンプル数を増やす必要がある。
SDGs融資、及び、ESG投資に対してアピールとなる特許出願の研究
~投資目線での分析、及び、効果的な明細書記載方法~
知的財産管理技能士会研究会 研究員:坪井央樹
本研究は、財務戦略、特に資金調達に特許出願を活用する方法について研究する。近年、ESG投資により多額の投資がされている。そのため、スタートアップ企業等は、資金調達にESG投資の対象となるのが財務戦略上有効である。同様に、金融機関等は、SDGs融資等の金融商品を展開してきている。
一方で、このような「投資家」に向けて、特許出願書面を通して、SDGs/ESG
投資対象になる技術を保有することをアピールするには、既存の「知財専門家」用の特許出願とは異なるアプローチが必要となる。
本研究は、SDGs融資、及び、ESG投資に対するアピールをする上で特許出願にどのような工夫が必要かを研究し、具体的な記載方法を研究する。
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スタートアップの知財権と資金調達の関係に対する一考察
~日本の大学発AI関連スタートアップの事案紹介~
知的財産管理技能士会研究会 研究員:仁平洋一
昨今、スタートアップ企業が注目され、第4次ブームといわれている。
スタートアップは、事業を存続するための資金調達を最優先に考えるべきであり、必然的に知的財産権への配慮が後回しになっている。
政府の後押しやCVCからの支援もあり、知財ポートフォリオ戦略を作成して、起業当初から知的財産権に注目しているスタートアップも存在している。
しかし、出願費用をかけて権利取得しているスタートアップは多くない。その一方で、必要以上に権利取得しているように見受けられるケースもある。
今回、技術力が一定以上のレベルにあり、一般よりも有利なビジネス展開を図ることができると考える大学発スタートアップをいくつか取り上げる。
仮説としては、大学発スタートアップは、資金調達に有効な知的財産権(特許権等)を活用して成長を加速させているとした。しかも他社との差別化を図るため知的財産権を企業アピールにも活用できている、と捉える。その仮説を検証していくこととする 。
なお、筆者は、日本の大学発ヘルスケア系スタートアップの事案を研究対象として、前年度から取り組んでおり、その延長上に、本テーマであるAI関連系が該当するものである。
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「クラブ」制リンゴ品種の知的財産に関する調査分析
知的財産管理技能士会研究会 研究員:櫻谷満一・ 川下英盛・ 野口真己
育成者権と商標権を活用した植物品種の保護と海外展開の取組みとして、リンゴ品種のクラブ制がある。クラブ制を採用しているリンゴ品種は、育成者権と商標権を組み合わせて果実の生産量と品質が管理されていることから、植物品種の知財マネジメントの面から注目されるが、これまで知財に関して詳細な調査はされておらず、その実態は十分に把握されていない。
そこで、本研究では、代表的なクラブ制リンゴ品種の知財の登録状況を調査・分析し、植物品種を海外展開する際の知財マネジメントについて考察した。その結果、クラブ制リンゴ品種の多くは、① 30 カ国以上で育成者権及び商標権が登録されていること、②「C ripps red」等育成年の古い品種では、存続期間満了によって育成者権が消滅した国も発生しているが、商標出願は現在も活発に行われていること、③こうしたことから、初期の段階では育成者権によって品種を保護し、長期的には商標に信用(good will)を蓄積し、育成者権の存続期間満了後も商標によって生産量や品質をコントロールすることが重要であることを示した。
ブランド拡張やライセンス化を可能にするブランドの条件
~価値デザイン社会において求められる知的財産の有効活⽤⽅法の提案~
知的財産管理技能士会研究会 研究員:我妻真二、栗原佑介、山本幸一、山下穣
価値デザイン社会において求められる 「価値」 を、知的財産の中の「ブランド」をベースに考察する。
具体的には、ブランドの「価値」の創出に必要なステップとしての「ブランド拡張戦略」からとらえる。ブランドは、経営デザインシートにおける資源、ビジネスモデル、提供価値、課題のうち、「資源」に位置付けられるものの、これを提供価値として位置付け、あるいは提供価値のあるものにすることに成功している日本企業は少ないのではないか。
そこで、経営デザインシートにおいて、資源を提供価値化するための具体的な方策を、Interbrand100にある特徴的な企業の商標出願状況を分析する。その結果をもとに、マーケティング戦略に知財戦略を組み入れた戦略を提案する。
◆研究活動の成果を「日本知財学会 第18回年次学術研究発表会」(2020年11月28日・29日開催)にて発表いたしました。
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『クラブ制リンゴ品種の知的財産に関する調査分析』 櫻谷満一 技能士、川下英盛 技能士、野口真己 技能士 |
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『ブランド拡張やライセンス化を可能にするブランドの条件~価値デザイン社会において求められる知的財産の有効活用方法の提案~』 我妻真二 技能士、栗原佑介 技能士、山本幸一 技能士、山下穣 技能士 |
『研究報告書』全文につきましては、知財技能士会マイページに掲載しています。
■2017~2018年度 研究会『研究報告書』■ 2019年5月31日公開
「都道府県を権利者とする登録商標の分析と考察~地域ブランド戦略の視点から~」
研究会 研究員: 櫻谷満一・野口真己・栗原佑介・我妻真二・戸谷景
【要約】
地域ブランドについては、経営学、地理学等多様な専門領域から多くの研究が行われているが、これらは、既に著名になっている地域や産品を対象にしているものが多く、著名性を獲得していない多くの地方公共団体の活動を俯瞰する研究は少ない。
本研究では、地域ブランドを定量的に分析するための予備的検討を行うため、都道府県が権利者となっている商標に着目し、全国的かつ定量的に地域ブランドの把握を試みた。その結果、商標は「30類」(食品)が最も多く、次いで、41類(一般役務)、29類(食品)の順であった。また、商標構成要素で分類すると「キャラクター」が最も多く、次いで、「産品名」、「図形・モチーフ」、「キャッチフレーズ・造語」の順であった。
こうした調査結果について、地域ブランド戦略の視点や商標権著作権等との関係から考察・提言を行った。
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◆本研究論文は日本弁理士会の会誌である月刊『パテント』(2019年4月号)に掲載されました(P.55~62)。
■2017~2018年度 研究会『研究報告書』■ 2019年5月31日公開
「キャラクタービジネスにおけるセグメントの可視化およびクラス分類によるビジネス戦略の新しいアプローチについて」
研究会 研究員: 山本幸一・井上達人
【要約】
キャラクタービジネスの分析は、通常、「キャラクター市場全体の動向」もしくは「各キャラクター」の定性分析を基軸に行われている場合が多い。本研究では、キャラクタービジネスを多様な側面から定量的に分析することにより、キャラクターの属性による分類と市場規模との関係の可視化を試みた。具体的には、「クラス分類」と「市場規模推定値」という概念を新たに導入し、「クラス分類」の項目ごとに、キャラクターの市場規模を示す指標の数値化を試みた。また、デモグラフィック的視点とサイコグラフィック的視点の2つを軸とする「8つの基本分析」と、それらを組み合わせた「3つの応用分析」を行い、「クラス分類」の各項目間の関係性を明らかにした。結果として、キャラクターの特徴に応じて、クラスの帰属を明らかにすることにより、ビジネス拡大に必要と考えられる戦略の考察・提言を行った。
■2017~2018年度 研究会『研究報告書』■ 2019年5月31日公開
「訴訟から見る知財戦略~企業に所属する知的財産管理技能士の観点から~」
研究会 研究員: 村谷正之・村上雅寛・仁平洋一・川下英盛
【要約】
特許はビジネス戦略を強化するための重要な道具の一つであり、道具である以上は活用できなければならない。そのために知財担当者は、特許活用の仕方を充分に把握できていなければならない。
特許活用可否の厳密な判断が行われるのが裁判所の判決である。そして、知財担当者の経験等に基づいた常識と裁判所における判断が異なっていることが多々ある。そのため、ビジネス戦略での有効活用のチャンスを逸してしまうおそれがある。
| 例えば、 | |
| A1. | 出願時にその目的を明確にしないまま、記載すべきではないことまで記載していたり、逆に肝心の権利化すべき内容を充分に記載していなかったり、そのことにより、狙い通りの権利範囲を取得できずに「他社参入障壁構築」を図れなかった。 |
| また、 | |
| B1. | 本来単独出願できるものを安易に共同出願にしてしまった。 |
| C1. | 企業買収により外資系の傘下に会社が入ったことで、ビジネス戦略が大きく変わった。 |
そこで我々は、特許活用可否の判断が厳密に行われる裁判所の裁判判例に注目した。知財担当者の経験等に基づいた常識と裁判所における判断が異なっていると、ビジネス戦略での有効活用のチャンスを逸してしまう畏れがある。特許を活用しようとした場合の活用可否の判断基準等を特許判例に基づいて明確化し、特許出願可否判断や特許出願明細書記載事項検討,権利化中間処理対応,訴訟対応の際に留意すべき知見を提案する。
■平成29~30年度 研究会活動のお知らせ■
日本知財学会第16回年次学術研究発表会での研究成果発表
【平成29~30年度の活動概況】
平成29~30年度の研究活動は、以下とおり進めてきました。
まず、各研究員が自ら希望する研究テーマを提案し、それぞれについて検討した結果、次の3つのテーマを取り上げることに決定しました。
そして、研究テーマごとに3つのグループに分かれ、それぞれグループ・リーダーを中心に研究活動を行ってきました。
●都道府県を権利者とする登録商標の分析(Aグループ)
●キャラクタービジネスにおけるセグメントの可視化およびクラス分類によるビジネス戦略の新しいアプローチについて(Bグループ)
●訴訟から見る知財戦略(Cグループ)
【研究成果の発表】
◆研究活動の成果を「日本知財学会 第16回年次学術研究発表会」(2018年12月1日・2日開催)にて発表いたしました。
| Aグループ (一般発表) |
Bグループ (一般発表) |
Cグループ (企画セッション) |
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■平成28年度 研究会『研究報告書』・発表のお知らせ■
「中小企業における標準化の成功事例~マーケティング戦略における標準化~」
研究会 研究員: 我妻 真二・井上 達仁
【要約】
近年、企業の成長戦略としてよく耳にする「オープン&クローズ戦略」であるが、「オープン戦略」の重要な要件として「標準化」がある。しかしながら、「標準化」がビジネスの成功に、どのような役割を果たしているかが判らなければ、戦略に「標準を取得」を組み込むことに対し、躊躇しがちになるのではないだろうか。特に大企業に比べて特許出願件数などが少ない中小企業にとっては「どういった技術内容を標準化することがビジネスの成功に結びつくのか?」という疑問が大きいと考えられる。
今回、2名の研究員が、それぞれの知見から「標準化」に成功した中小企業の事例を選定し、ビジネス成功における「標準化」の役割について研究を行った。その結果、①「標準化」戦略は、知財と標準の組合せによって異なる、②「標準化」は、マーケティング戦略における重要な要素として考えることができ、マーケティング戦略に「標準化」の選定・活用を組み込むことがビジネスの成功に結びつく、という結論を得た。
【学会発表】
| 同研究成果を、日本知財学会「第15回年次学術研究発表会」(2017年12月2日・3日開催)にて発表しました。 |
■平成28年度 研究会『研究報告書』・発表のお知らせ■
「平成27年改正による職務発明制度~問題点の確認と対処~」研究会 研究員: 川下 英盛
【要約】
平成27年特許法改正による職務発明制度が平成28年4月1日より施行された。職務発明の特許を受ける権利について、発明者である従業者等帰属のみから使用者等帰属も選択できることになった。今回の改正は、(1)特許を受ける権利の共有に係る場合の帰属の不安定性、(2)特許を受ける権利の二重譲渡が行われた場合の帰属の不安定性、(3)相当の対価の在り方に対する多様なニーズの高まり、(4)相当の対価に関する法的予見可能性の低下及び算定の複雑化に対する懸念に対応するために策定された。これらの問題を確認した結果、改正によらなくても解決できている問題や改正によってもなお解決できていない根本的な問題点が残っていることが確認できた。職務発明制度の改正前と改正後を比較し、問題の確認と最適な対処方法等を考察した。
【学会発表】
| 同研究成果を、日本知財学会「第15回年次学術研究発表会」(2017年12月2日・3日開催)にて発表しました。 |
■平成28年度 研究会『研究報告書』・発表のお知らせ■
「知的財産管理技能士の実態調査~アンケート調査の集計結果と考察~」
研究会 研究員:西岡朝明・松浦昌宏
【要約】
知財技能士数は年々増えてきており、各方面で活躍している一方、資格を活かし切れていないと感じている知財技能士も少なからず存在するという声が聞かれたりする。このような状況を受け、Webアンケート調査を実施し、種々の業種に所属する知財技能士の実態を把握することにより、自分自身のキャリアの現状を見直していただく機会や、経験の浅い知財技能士の方のキャリアアップにつながるようなヒントを提供することを目的として本調査研究を実施した。
今回、Web形式のアンケート調査を実施し、949名の回答を得たが、有効回答数は805件であった。技能士資格別にみると、1級で複数の有資格者、下位級との重複資格者があり、有効回答者の延べ有資格者数は1,024名であった。その内訳は、1級特許112名(10.9%)、1級コンテンツ26名(2.5%)、1級ブランド22名(2.1%)、2級516名(50.4%)、3級348名(34.0%)であった。
アンケート項目の設問ごとに集計・分析し、幾つかの知見を得た。例えば、①知財業務経験なしでも2級、3級の有資格者が98%以上存在し、キャリアアップや知財部署への転属のために資格取得を目指している人が多いのではないかと考えられること、②3級や2級は職種全般にわたって取得されており、1級全体では「知財・法務」職種が極めて高い割合であったこと等から、この資格制度は職種や業務レベルに相応しい資格を提供しているのではないかと考えられること、③知財技能士資格取得に関する志望動機については、少なくとも現状では、業務直結の資格として認識されているというよりは、キャリア形成の一環として位置付けられているように考えられること、④知財技能士資格の取得によって自分自身ではある程度「知的財産に関して自信が持てるようになった」が、職場や顧客の反応は「特に変化なし」が大半であったこと、⑤将来、知財技能士資格を活かしていきたいと「考えている」が知財技能士資格に対して厳しい見方をせざるを得ない現実があることなどである。
上記のような結果を受け、本報告書では、①知財技能士、②知財技能士会、③知的財産教育協会に対して幾つかの提言を行った。
■平成28年度 研究会『研究報告書』・発表のお知らせ■
「平成27年改正による職務発明制度~改正職務発明制度下における、非金銭的報酬に係る一考察~」
研究会 研究員:仁平 洋一
【要約】
・インセンティブ施策としての「非金銭的報酬」について、企業等が旨く制度設計すれば、発明者である従業者等にとってより良いものとなる。
・知財施策と人事施策が混在していく方向と捉える。知財施策における知財の要件が、人事施策のみのものと比べて足かせにならないインセンティブ施策が望ましいと考える。
・従業者等の発明に対するモチベーションの維持・向上のため、企業等は、今後とも発明者の貢献に対する評価と処遇を、各企業等の内部規定に基づき適切に講じていく、との宣言を注意深く見守って行く必要がある。
・個々の企業文化に合わせ、画一的でない企業等の独自な職務発明の制度設計を期待する。
■平成27年度 研究会『研究報告書』・発表のお知らせ■
「イノベーションの要因と知的財産」研究会 幹事:松浦 昌宏
研究員:我妻 真二・川下 英盛・仁平 洋一・林 瑞枝・宮澤 亘
【要約】
平成27年度『研究報告書』目次はこちら
イノベーションの創出は容易ではないが、これまでも大企業、中小企業を問わず生き残りをかけて実践されてきた。そこで各研究員がこれまでに創出されたイノベーションの事例を選定し、その要因を探ること及び知的財産との関連性を考察することで、知財技能士がイノベーションの創出や知的財産戦略構築に寄与できる可能性を示し、知財技能士のキャリアアップのヒントを提供したいと考えた。
各研究員は様々なキャリアやバックグラウンドからなっており、選定した事例は多岐に及ぶ。各研究員はそれぞれ選定した事例でイノベーションの要因と知的財産との関連性を考察した。
その結果、イノベーションを導く要因(アプローチ)としては、①異業種参入、異分野融合、又は異文化や習慣からのアプローチ、②コア技術からのアプローチ、という共通点があると考えられた。また、知的財産との関連性についても、①単発の出願でなく継続して漏れのない出願を行って群を構築していること、②異業種、異分野の他者の技術について共同出願や権利化されている特許の実施権を取得していること、③商標権も取得しブランド化を図り、知的財産権ミックス活動を行っていること、等の共通点も浮かび上がってきた。
上記のような考察を踏まえて、知財技能士は知的財産が生み出された後の受身的な管理だけではなく、イノベーション創出の過程にも積極的に参加できると考える。先行技術調査による侵害回避や他者との差別化支援等は知財技能士の技能の範囲であるが、更に開発現場と共に、発明、意匠、商標、ノウハウ等の知的財産を戦略的に形成することにより、イノベーション創出に適切な対応ができるものと考える。
【研究報告書の掲載誌について】
平成27年度研究報告書を『IPマネジメントレビュー』20号にて発表しました。
<お知らせ>
同研究成果を、日本知財学会「第14回年次学術研究発表会」(2016年12月3日・4日開催)にて発表しました。
■平成26年度 研究会『研究報告書』・発表のお知らせ■
「産学官連携機関において求められる知財人材像」研究会 幹事:冨重 弘
研究員:我妻 真二・川下 英盛・仁平 洋一・松浦 昌宏・宮澤 亘
【要約】
平成26年度『研究報告書』目次はこちら
今日まで、産学官連携機関の組織・機能・活動内容については、色々な調査がされ、報告されているが、 産学官連携機能の強化に欠かせない知財人材の育成については重要視されているものの、「知財人材が具体的に どうあればよいのか」についてはまだ議論半ばであり、依然大きな課題であると感じられる。
そこで、今年度の研究会では、「産学官連携機関で実際に求められている知財人材像とはどのようなものか」に ついて研究することとした。産学官連携機関の知財人材はどのようなスキル・強みを持ち、活動しているのかの実態について着目することとし、実際に産学官連携業務に日々携わっている機関を訪問して直接ヒアリングを行い、 分析することで、産学官連携機関において求められる、より具体的な知財人材像に迫ってみた。
本研究成果が、知的財産管理技能士にとって今後の参考になれば幸いである。
【研究報告書の掲載誌について】
平成26年度研究報告書を『IPマネジメントレビュー』16号にて発表しました。
<お知らせ>
同研究成果を、日本知財学会「第13回年次学術研究発表会」(2015年12月5日・6日開催)にて発表しました。
■平成25年度 研究会『研究報告書』・発表のお知らせ■
「中小企業における知財活用型経営の成功要因分析」研究会 幹事:宮澤 亘 研究員:川下 英盛・冨重 弘・永井 武
【要約】
平成25年度『研究報告書』目次はこちら
我が国の中小企業は、企業数で見れば全体の99%を超えるが、知財活用型経営ができている中小企業はまだ多いとは言えない。しかし、中小企業の中でも中小企業ならではの機動力を活かして知財活用型経営を実践し、一定の成果を出している企業も存在する。そのような企業はなぜ知財活用型経営を実践でき成果を出せるのか、平成25 年度研究会では、実際に知財活用型経営が実施できていると考えられる企業4社(株式会社タニタ、株式会社デュエル、Mipox株式会社、株式会社松井製作所(企業名五十音順))から具体的な成功事例を直接ヒアリングし、その結果を分析し、知財活用型経営の成功要因を検討した。
本研究成果が、現時点で知財活用型経営が難しい状況にある中小企業にとって今後の活動の参考になれば幸甚である。
【研究報告書の掲載誌について】
平成25年度研究報告書を『IPマネジメントレビュー』12号にて発表しました。
関連する各国法制度について」
研究会 幹事:永井 武 研究員:川下 英盛・宮澤 亘
【平成24年度 『研究報告書』について】
研究会では、知財技能士に協力いただき実施したアンケート調査(2011年3月実施)において、最も関心の高かった2つのテーマ「進歩性の判断」「国際知財戦略―主に東アジア」について研究を進め、「進歩性の判断」については、2012年3月発行の『IPマネジメントレビュー』4号別冊にて研究報告書を発表しました。今回の研究報告書は、2つ目のテーマである「国際知財戦略―主に東アジア」に関するものです。本研究報告書では、国際知財戦略の中でも事例や研究報告が非常に少なく、知財技能士が関心をもっていると思われるベンチャー企業における取り組みについてターゲットを絞ることとしました。
本研究報告書は、「ベンチャー企業におけるグローバル知財戦略経営の事例」と、「グローバル知財戦略経営に必要な各国法制度」の大きく2 本立てとなっています。まず、研究会幹事の永井武が、知財戦略を重視する経営コンサルタントであり、その専門がベンチャー・中小企業であることから、実際の企業現場でコンサルティングした事例を基に、ベンチャー企業におけるグローバル知財戦略経営の取り組みについて報告し、また、グッドデザイン賞や発明大賞など数々の賞を受賞している作業工具メーカーの株式会社エンジニア(代表取締役社長 高崎充弘「知財技能士」)におけるグローバル知財戦略経営の取り組みについてもあわせて紹介していきます。そして、川下英盛研究員と宮澤亘研究員より、ベンチャー企業にとって非常に関心のあるテーマであるグローバル知財戦略経営に必要な各国法制度について概説することとし、平成24年度研究会『研究報告書』としてまとめることとしました。
【要約】
平成24年度『研究報告書』目次はこちら
我が国における産業構造転換の流れとなった国内から海外、特にアジアへの製造拠点移転の流れが、やがて中小・ベンチャー企業へと押し寄せました。その後今日に至るまで、更に加速されている国内から海外、特にアジアへの大きな流れとして、マーケット規模拡大の流れがあります。国内マーケット収縮の厳しい現状からも、中小・ベンチャー企業においては、海外への対応をしていかなければならない時代に突入してきたと言えます。
知財を重視する中小・ベンチャー企業においては、このような時代背景より国内から海外の流れに対応したグローバル知財戦略の経営をしていくことが言わば必須条件となってきました。そこで、本研究では、実際に取り組んでいるベンチャー企業の事例よりグローバル知財戦略経営について検討した結果を報告させて頂き、それに付随した各国法制度についても概説することとしました。
【研究報告書の掲載誌について】
平成24年度研究報告書を『IPマネジメントレビュー』8号にて発表しました。
「判例研究―進歩性の判断に関する研究―」
研究会 幹事:川下 英盛 研究員:永井 武・宮澤 亘
【要約】
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研究会では、知財技能士が実務において裁判例を参考に法律の解釈を検討する機会が多いことから、研究テーマとして「判例研究」を取り上げることとし、知財技能士に協力いただいたアンケートで知財技能士の関心が最も高かった「進歩性の判断」を平成23年度の主のテーマに設定しました。
本研究では、時代の変遷により進歩性判断がどのように変化しているかを検討するために、審判、審決取消訴訟の統計データおよび「動機づけ」に関して争われ た進歩性に関する審決取消訴訟の代表的な裁判例について検証しました。本研究における統計的検討および裁判例検討によれば、特許権者から見て進歩性が肯定され易くなっているかのようにも見えますが、個別的に裁判例の判断を見るに、時代に関係なく請求項に対して明文化された証拠の有無により判断されていると考えられます。
【研究報告書の掲載誌について】
平成23年度研究報告書は、『IPマネジメントレビュー』4号別冊として発表しました。
















